🩹「湿布が63枚まで」——それは医者の判断ではありません

〜国民皆保険制度を守るために、現場から伝えたいこと〜

最近、診療の現場で患者さんからこんな声を聞くことが増えました。
「先生、湿布が少なくなりましたね」
「市販薬を買ってくださいって言われたけど、なんだかケチくさいですね」

実はこれ、医師の判断で湿布を減らしているわけではありません。
厚生労働省が定めた全国共通のルールにより、
湿布は一度に63枚までしか処方できないという制限があるのです。

■ なぜ湿布の枚数が制限されたのか?

日本では、医療費全体の膨張を抑えるために、保険でカバーできる範囲を段階的に見直す方針が進んでいます。

その一環として、湿布や一部の外用薬・ビタミン剤・整腸薬などが
「OTC医薬品(市販薬)」に移行されました。

つまり、「医療機関で処方してもらえる薬」が減り、
「自分で薬局で買う薬」が増えているということです。

医療費の無駄遣いを減らすという目的は理解できますが、
一方で、患者さんの自己負担が増える現実もあります。
特に高齢の方々にとっては、この変化が家計に大きく響くことも少なくありません。

■ 医療現場も苦しい立場にあります

私たち医療者も、「もっと出してあげたい」という思いがあります。
慢性的な痛みで湿布が欠かせない方や、長年通ってくださる患者さんにとって、
枚数制限は現実的ではないと感じることも多々あります。

しかし、制度として定められている以上、医療機関が勝手に多く出すことはできません。
それは不正請求となり、国民皆保険制度そのものを揺るがしかねないのです。

「じゃあ市販薬でお願いします」と伝えるたびに、「先生、ケチですね」と言われることもあります。
ですが、私たちが“節約”しているのではなく、国全体の制度としてそうせざるを得ないというのが現状です。

■ 国民皆保険制度を守るということ

日本の医療制度の最大の特徴は、「誰もが平等に医療を受けられる」という
国民皆保険制度です。

これは、病気になった人を、健康な人が支える仕組み。つまり「助け合い」で成り立っています。

病気にならない人は保険を使わないかもしれません。
しかし、その保険料が、今まさに医療を必要としている人の命を支えています。

誰かの健康が、誰かの安心につながる——それが国民皆保険制度の本当の意味です。

■ 患者さんに伝えたいこと

医療費の見直しや薬剤の制限は、決して私たち医療者が望んで行っていることではありません。
むしろ、「どうすれば患者さんの負担を減らせるか」を日々考えながら診療しています。

制度が変わっても、私たちは一人ひとりに合った治療を提案し、
少しでも安心して通っていただけるよう努めてまいります。

■ 最後に

時代が変わっても、病気やけがは誰にでも起こりえます。
だからこそ、「医療」は特別な人のためではなく、
すべての人のために平等であるべきものです。

国民皆保険制度は、日本が世界に誇る大切な仕組みです。
この制度を守ることは、未来の日本に“安心して医療を受けられる社会”を残すことにつながります。

📍朋クリニックでは、制度の中で最善の治療を提供し、患者さんの負担を少しでも減らせるよう努めています。
制度の変化や薬剤の制限についてご不明な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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