保険実務の姿勢は被害者救済の質を左右する ― 制度運用の差が生む現場の現実

本稿は感情的な批判ではありません。
交通事故医療の現場で継続的に経験している実務上の差異を、
制度構造の問題として整理するものです。

交通事故補償制度の本質は、被害者の適正な回復と生活再建です。
しかし実際の運用においては、
保険会社ごとの姿勢の違いが、
被害者体験に大きな影響を与えていると感じます。

私の臨床経験上、
一部の保険会社では、
医学的説明に対して耳を傾け、
主治医との確認を丁寧に行い、
被害者への説明も比較的落ち着いた姿勢で行われる傾向があります。

あいおいニッセイ同和損保やAIGに関しては、
少なくとも私が接してきた事例では、
医療側と対立するというよりも、
事実確認を重ねながら調整していく姿勢が安定している印象があります。
担当者間のばらつきも比較的少なく、
組織としての統一感を感じる場面がありました。

一方で、
業界大手の一部では、
社内基準の提示が先行し、
医学的説明よりも期間目安が優先されているように受け取られる場面があります。

治療終了の方向性が突然示される。
その理由が十分に説明されない。
医療側の判断であるかのように患者へ伝わる。

こうした運用が繰り返されれば、
被害者は「一方的に決められている」という印象を抱きます。

さらに、
補償や治療継続について被害者が強く意見を述べた場合に、
防御的な姿勢が前面に出ると、
対話そのものが硬直化します。

ここで問うべきなのは、
個人の態度ではなく、
組織文化と制度設計です。

市場シェアや業界規模が大きい企業ほど、
社内基準の統制が強くなるのは理解できます。
しかし、
規模の大きさが柔軟性の欠如として表れるならば、
被害者保護の観点から再検討が必要です。

医療は個別症例で判断します。
統計的目安だけでは評価できません。

診断書は医師法に基づく公的文書であり、
刑法上も真実性が強く求められています。
それが制度基準に従属するような運用は、
法的構造とも整合しません。

問題は「どの会社が良いか悪いか」ではありません。
どの制度運用が被害者中心か、です。

被害者にとって重要なのは、

  • 医学的判断が尊重されているか
  • 治療終了の理由が明確に説明されているか
  • 医療機関との確認が丁寧に行われているか
  • 対話が防御的ではなく建設的であるか

制度は人を守るために存在します。
規模や影響力が大きい企業ほど、
その責任もまた大きいはずです。

業界を代表する立場にあるのであれば、
被害者対応の質においても
模範であってほしい。

現場から見える課題を、
対立ではなく改善への材料として受け止めていただきたいと考えます。


本記事は筆者の臨床経験に基づく一般的論考であり、
特定企業の評価を目的とするものではありません。

朋クリニック