明石市・西明石|朋クリニック

マンジャロは本当に危険?

ゼップバウンドとの違いと、
適切な治療の考え方

必要な治療を、怖がりすぎない。
必要のない痩身には、使わない。

情報確認日:2026年9月16日

「マンジャロは危ない」「ダイエットに使って体調を崩した」。こうした報道を見て、糖尿病の治療として処方されている方まで、不安になってしまうことがあるかもしれません。

美容目的の安易な使用や、不十分な診察、個人間での売買などへの注意喚起は必要です。しかし、その問題と、医療上必要な患者さんに対する治療は、分けて考える必要があります。[1][3]

薬の名前だけで、必要な治療を遠ざけないでください。

マンジャロは、適応のある患者さんにとって治療の選択肢となる薬です。「誰にでも危険」でも「誰にでも安全」でもありません。大切なのは、治療の必要性を見極め、効果と副作用を確認しながら使うことです。[1]

この記事では、同じ有効成分を含む「ゼップバウンド」との違いも含めて、治療としての使用と、過度な痩身目的の使用についてお伝えします。

マンジャロとゼップバウンドは、同じ有効成分の薬です

マンジャロとゼップバウンドの有効成分は、どちらも「チルゼパチド」です。GIPとGLP-1というホルモンの受容体に作用する、週1回の注射薬です。同じ含量の製品では、電子添文に記載された添加剤も共通しています。[1][2]

日本で承認されている対象の違い
比較項目マンジャロゼップバウンド
有効成分チルゼパチドチルゼパチド
対象疾患2型糖尿病条件を満たす肥満症
条件を満たす中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群

2026年9月時点。睡眠時無呼吸症候群への使用にはBMI 27以上などの条件があります。単に「いびきがある」「体重が気になる」という理由だけで対象になるわけではありません。[1][2]

なぜ、中身が同じなのに商品名が違うのでしょうか?

薬は、有効成分だけでなく、「どの病気の、どのような患者さんに、どの量・方法で使うか」も含めて承認されます。マンジャロは2型糖尿病の治療薬として、ゼップバウンドは肥満症などの治療薬として、それぞれの臨床試験と承認内容を持つ別製品として販売されています。通常の維持用量など、治療の設計にも違いがあります。[1][2][4]

つまり、名前が違うのは「片方は危険で、片方は安全」という意味ではありません。患者さんにとって重要なのは、ブランド名の印象ではなく、自分の病気がその薬の対象かどうかです。

同じ成分でも、承認された使い方まで同じではありません。

ゼップバウンドに肥満症の適応があっても、マンジャロの美容・痩身目的での使用が承認されたことにはなりません。自費であれば適応内になる、ということでもありません。自己判断で切り替えたり、両方を併用したりしないでください。[2][3]

価格の違いは、一律に「約1割」ではありません

公定薬価は製品ごとに設定され、改定によって変わります。マンジャロは2026年8月1日に薬価が引き下げられており、現在の差を一律「ゼップバウンドが約1割高い」と説明することはできません。[6][7]

公定薬価の比較例/1キット(1回分)
含量マンジャロゼップバウンド
2.5mg1,443円3,067円
5mg2,886円5,797円

2026年9月確認。上記は公定薬価であり、当院の販売価格や窓口での自己負担額、自由診療の料金ではありません。保険適用の可否や診察・検査等により実際の費用は異なります。価格差だけを理由に、承認された対象から外れた使い方を選ぶことは勧められません。[3][6][7]

肥満症の治療は、「もっと細くなるため」ではありません

肥満に関連する健康障害には、糖代謝の異常、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、膝や股関節などの変形性関節症などがあります。肥満症治療の目的は、見た目や体重の数字だけを変えることではなく、こうした健康障害の改善を目指すことです。[5]

「肥満は本人の努力不足」と片づけたり、治療薬を使うことを「甘え」と考えたりしてほしくありません。必要な方が治療を受けやすいことも、医療にとって大切です。[13]

膝・股関節・腰の不調にも、体重管理という視点を

過体重や肥満を伴う変形性関節症では、減量が痛みや日常動作の改善につながることがあり、運動療法と適切な体重管理が推奨されています。膝や股関節の痛みがある方にとって、体重を健康的に整えることが、治療の一部になる場合があります。[8]

ただし、マンジャロやゼップバウンドは、関節や腰の痛みを直接治す薬ではありません。痛みの原因はさまざまで、腰痛への効果も一律にはいえません。体重を落とせば必ず治ると考えず、整形外科での評価やリハビリテーションも並行して検討します。[1][2][8]

「肥満がある」ことと「薬の対象になる」ことは別です

ゼップバウンドを肥満症に使用する場合は、高血圧・脂質異常症・耐糖能障害のいずれかがあり、食事療法と運動療法だけでは十分な効果が得られないことに加え、次のいずれかに該当する必要があります。[2]

条件 ABMI 27以上で、肥満に関連する健康障害が2つ以上ある

または

条件 BBMI 35以上である

耐糖能障害には2型糖尿病や耐糖能異常等が含まれます。上記は肥満症の承認条件の概要で、耐糖能異常のみの場合などには追加の注意事項があります。BMI 35以上だけで対象になるわけではありません。保険診療には治療歴や医療機関の体制などの条件もあり、診察で確認します。[2][4]

一方、マンジャロは2型糖尿病の薬です。糖尿病治療としての必要性は、ゼップバウンドの肥満症の条件とは別に判断します。[1]

適切に使うとは、「診察を受けて買うだけ」ではありません

大切なのは、薬の適応や持病・併用薬を確認し、開始後も食事、水分、体調、検査結果などを見ながら治療を調整することです。体重が減ったかどうかだけで判断しません。薬物治療を行う場合も、食事療法・運動療法を続けます。[1][4]

「食欲がなくなったから、何も食べなくてよい」という使い方は適切ではありません。食べられない、飲めない、強いだるさがあるなどの変化を、痩せている証拠だと我慢せず、処方した医療機関へ伝えてください。[1][2]

正しく使っても、副作用がゼロになるわけではありません

吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの胃腸症状が起こることがあります。急性膵炎、胆のう・胆管の病気、腸閉塞を含むイレウス、重いアレルギー反応、低血糖などの重大な副作用にも注意が必要です。嘔吐や下痢による脱水が腎臓に影響することもあります。[1][2]

特にインスリンや一部の糖尿病薬との併用、食事摂取量の不足などは、低血糖のリスクに関係します。妊娠中・妊娠している可能性がある方は使用できません。妊娠の希望や経口避妊薬の使用も、必ず医師に伝えてください。[1][2]

このような症状は、様子を見続けずにご相談ください

強い腹痛が続く、繰り返し吐く、水分がとれない、お腹が張って便やガスが出ないなどの症状があれば、次回の受診日を待たず、速やかに医療機関へ連絡してください。激しい腹痛など重大な副作用が疑われる場合は、追加の注射をせず受診してください。意識や呼吸に異常がある場合は、119番などの救急対応が必要です。[1][2]

私たちがお伝えしたい「怖がりすぎなくてよい」は、「副作用を知らなくてよい」という意味ではありません。リスクを知り、必要なときに相談できる状態で使うことが大切です。

糖尿病治療として使用している方は、報道を見ただけで自己判断の中止や変更をせず、不安な点を主治医に相談してください。ただし、上記のような副作用が疑われる症状があるときは、速やかな連絡・受診を優先してください。[1]

「あと1〜2kg減らしたい」だけで、必要になる薬ではありません

健康上の必要性がないのに、標準体重や低体重の方が「もう少し細くなりたい」という理由で使うことは、承認された治療とは異なります。美容・痩身目的でのマンジャロの有効性・安全性は確認されていません。[3]

また、体重は水分の状態や月経周期などでも変動します。短期間に1〜2kg増えたからといって、そのすべてが脂肪になったとは限りません。数字の変化だけで、急いで薬を使う必要があると考えないでください。[10]

気になるのは、体重の数字より「生活への影響」です

「少し体重が増えると、仕事や学校に行けない」

「薬がないと不安で眠れない」

「周囲に痩せていると言われても、もっと減らさないと安心できない」

このようなときは、さらに体重を減らす方法よりも、体重への不安が生活を圧迫していないかを確認することが大切です。摂食障害などが背景にある可能性も含めて、心身の状態を評価します。これだけで「強迫症」や「依存症」と決めつけることはできません。[9][12]

これは、本人の意志が弱いという話でも、叱れば解決する話でもありません。体重が標準範囲でも、不安や食事へのこだわりが強く、生活に支障があるなら相談してよいのです。[9][12]

そのとき必要なのは、体重を減らすことより、苦しさを減らすことかもしれません。

まずは、かかりつけ医や心療内科・精神科、摂食障害の相談窓口などに、そのままの気持ちを伝えてください。薬を求める気持ちの背景にある不安にも、支援が必要です。[9][12]

薬の危険性だけでなく、極端な痩身をあおるSNSにも目を向けたい

極端な痩せや食事制限を肯定するSNS動画への接触が、体への不満や「細さが理想」という考えを強めることを示した実験研究があります。ただし、摂食障害がSNSだけで起こるという意味ではありません。[11][12]

私たちは、「もっと細くないと価値がない」「食べないことが美しい」といった発信や、診察を軽視した薬の勧誘にも、目を向ける必要があると考えています。

必要な治療薬を一律に悪者にするのではなく、治療の必要がない人にまで薬を求めさせる情報や、体調を崩しても痩せることを優先させる価値観を見直す。その視点も大切ではないでしょうか。

批判したいのは、悩んでいる方の年齢や性別、職業ではありません。健康よりも痩せることを優先させてしまう情報や環境です。

怖がりすぎず、軽く考えすぎず。健康のための治療を

同じチルゼパチドという成分が、2型糖尿病や条件を満たす肥満症などの治療に使われていることは、知っていただきたい事実です。一方、ゼップバウンドが承認されているからといって、誰がどのように使っても安全ということではありません。[1][2]

糖尿病の治療が必要な方、肥満に伴う健康障害に悩む方には、適切な治療を受けていただきたい。すでに痩せているのに「もっと痩せなければ」と苦しんでいる方には、安易に薬を増やすのではなく、その苦しさに向き合う支援につながっていただきたいと考えています。

薬を必要とする人には、正しい治療を。
薬を必要としない人には、別の支えを。

目指すのは、いちばん軽い体重ではなく、より健やかに暮らせる毎日です。

参考資料

承認内容・薬価等は2026年9月16日に確認しています。改定されることがあるため、最新情報は各公式資料をご確認ください。

  1. PMDA:マンジャロ 電子添文
  2. PMDA:ゼップバウンド 電子添文
  3. 厚生労働省:マンジャロ・リベルサスなどの2型糖尿病治療薬の美容・痩身目的での使用に関する注意喚起
  4. 厚生労働省:最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(肥満症/2026年5月改訂、PMDA掲載)
  5. 田辺ファーマ:ゼップバウンドの閉塞性睡眠時無呼吸症候群への適応追加等について(2026年6月1日)
  6. 厚生労働省:再算定を受ける品目について(2026年8月1日適用のマンジャロ薬価)
  7. 田辺ファーマ:薬価/規格(マンジャロ・ゼップバウンド)
  8. NICE:Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management(NG226、体重管理の推奨)
  9. 国立精神・神経医療研究センター:摂食障害のサイン
  10. 国立精神・神経医療研究センター:摂食障害の認知行動療法マニュアル
  11. Blackburn MR, Hogg RC. PLOS ONE(2024):極端な痩身を肯定するTikTok動画と身体イメージについての実験研究
  12. 国立精神・神経医療研究センター:摂食障害とは
  13. 日本肥満学会:肥満症の偏見・差別解消に向けたアドボカシー活動
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