感染性胃腸炎が急増しています ― 今、本当に注意が必要な理由

現在、感染性胃腸炎の患者数が明らかに増加しています。外来診療においても、突然の嘔吐、下痢、腹痛、発熱を主訴に受診される方が増えており、例年よりも強い流行がみられます。

感染性胃腸炎は「お腹の風邪」と軽視されがちですが、強い脱水を引き起こし、高齢者や小児では重症化することもあります。さらに感染力が強く、家庭内や職場内で急速に広がるため、今の時期は特に注意が必要です。

感染性胃腸炎の主な原因

原因はウイルス・細菌など多岐にわたります。特に冬季はノロウイルスを中心としたウイルス性胃腸炎が増えます。

  • ノロウイルス
  • ロタウイルス
  • アデノウイルス
  • カンピロバクター
  • サルモネラ菌
  • 病原性大腸菌

「生ものを食べていないのに感染した」― よくある疑問

外来でよく聞かれるのが「生ものは食べていないのに、なぜ感染したのですか?」という質問です。

結論として、感染性胃腸炎は生ものを食べなくても感染します。現在は食事由来よりも、接触感染による感染が多いのが実際です。

主な感染経路は「トイレ」と「手」

感染者の便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれます。トイレ使用後の手指に付着し、環境中に広がったウイルスが口に入ることで感染します。

  • 便座、便器のフタ
  • トイレのレバー
  • ドアノブ
  • 蛇口
  • タオル(共用)
  • 手すり、共有物品

家庭内感染が最も多い理由

家庭内はトイレや生活動線を共有するため、感染が広がりやすい環境です。特に次の状況では注意が必要です。

  • 感染者と同じトイレを使用している
  • トイレの消毒をしていない
  • タオルを共用している
  • 手洗いが不十分

最も重要な感染対策 ― トイレの塩素消毒

ノロウイルス対策で重要なのは、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)による消毒です。アルコールはノロウイルスには効果が不十分です。

具体的な消毒方法(希釈の目安つき)

市販の塩素系漂白剤(例:家庭用漂白剤)を使用します。便座、フタ、レバー、ドアノブ、床、洗面周りを重点的に拭き取り消毒してください。

希釈の目安:家庭用漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム約5%)を水で約50倍に希釈

例:漂白剤10mL + 水500mL

ペーパータオルに含ませて拭き取り、使用後は密閉して廃棄してください。

嘔吐物の処理は「飛散させない」ことが最優先

嘔吐物には大量のウイルスが含まれます。乾燥するとウイルスが舞う可能性があるため、処理時は慎重に行います。

  • 使い捨て手袋を着用
  • マスクを着用
  • ペーパータオルで静かに覆って除去
  • 周囲を塩素で拭き取り消毒
  • 処理後は石鹸と流水で手洗い

手洗いが最も効果的な予防策

石鹸と流水で30秒以上の手洗いを推奨します。アルコール消毒のみでは不十分です。

  • トイレの後
  • 食事の前
  • 帰宅後
  • 感染者の看病後

受診の目安と注意点

次の場合は早めの受診をおすすめします。

  • 水分が取れない、尿が極端に少ない
  • 強い倦怠感、意識がぼんやりする
  • 血便、激しい腹痛
  • 高熱が続く
  • 乳幼児、高齢者、基礎疾患がある方

まとめ ― 生ものを食べていなくても感染します

感染性胃腸炎は、生ものを食べた人だけが感染する病気ではありません。トイレや手指を介した接触感染で広がることが多く、家庭内では特に注意が必要です。

手洗いと塩素消毒を徹底し、感染拡大を防ぎましょう。

朋クリニック