手足口病 2026年夏に増加
掲載情報は厚生労働省・国立健康危機管理研究機構(JIHS)の公式ガイドラインに基づいています。
手足口病は夏を中心に流行する、子どもに多いウイルス感染症です
「子どもの手に赤いブツブツが…これって手足口病?」「熱が出てご飯を食べてくれない」「保育園でもらってきたみたい」——そんな経験をされた親御さんは多いのではないでしょうか。
2026年の夏、手足口病の流行発生警報が複数の都道府県で発令されており、例年よりも早い時期から患者数が増加しています。「子どもの病気」というイメージが強い手足口病ですが、実は大人にも感染することをご存じですか?
この記事では、内科医の立場から手足口病の症状・感染経路・家庭でのケア・受診のタイミングまで、わかりやすくお伝えします。正しい知識を持てば、過度に怖がる必要はありません。でも、きちんと知っておくことが大切です。ぜひ最後まで読んでみてください。
🦠 手足口病ってどんな病気?
手足口病(てあしくちびょう)は、エンテロウイルス(コクサッキーウイルスA6・A16・A10、エンテロウイルス71など)が原因で起こるウイルス感染症です。名前のとおり、手・足・口の中に水ぶくれや発疹が出るのが特徴です。
日本では毎年夏(6〜8月)を中心に流行し、特に5歳未満の乳幼児に多く見られます。保育園や幼稚園など集団生活の場で広がりやすく、「夏かぜ」の代表的な病気のひとつです。
多くの場合、発症から7〜10日程度で自然に回復します。特効薬はありませんが、適切なケアで症状を和らげることができます。ただし、まれに合併症を起こすことがあるため、経過の観察は大切です。
原因ウイルスには複数の型があり、一度かかっても別の型に感染すると再びかかることがあります。毎年流行する型が変わることもあり、同じシーズンに2回かかるケースも報告されています。
🔍 発症前の「予兆」を見逃さないで
手足口病の潜伏期間は3〜5日程度です。症状がはっきり出る前に、次のような「予兆」が見られることがあります。お子さんの様子がいつもと少し違うと感じたら、注意して観察してみましょう。
- なんとなく元気がない、ぐずる
- 食欲が落ちている(いつもより食べない)
- のどに違和感があるようで、飲み込みを嫌がる
- 微熱(37℃台)が出ている
- よだれがいつもより多い
通っている保育園や幼稚園から「手足口病が流行しています」というお知らせが来ていたら、お子さんの様子をいつも以上に注意して観察してください。感染してから症状が出るまでの間も、他の人にうつす可能性があります。
🌡️ 主な症状と経過の目安
手足口病の4大症状。口・手・足の発疹と発熱が特徴です
手足口病の症状は、大きく分けて「発疹(ぶつぶつ・水ぶくれ)」と「発熱」の2つです。それぞれの特徴と、日数ごとの経過の目安を確認しておきましょう。
発疹(ぶつぶつ・水ぶくれ)の特徴
手足口病の発疹は、次の3か所に出るのが典型的です。
- 口の中(口腔粘膜):舌・歯ぐき・のどの奥などに赤い発疹や水ぶくれ(口内炎)ができます。痛みが強く、食事や水分をとりにくくなることがあります
- 手のひら・指:赤い発疹や小さな水ぶくれが出ます。かゆみは少ないことが多いですが、痛みを感じる場合もあります
- 足の裏・足の甲:手と同様に赤い発疹や水ぶくれが出ます。おしり・ひざ・ひじに出ることもあります
水ぶくれの中にはウイルスが含まれています。つぶしてしまうと感染が広がる可能性があります。自然に乾いてかさぶたにならずに治っていくのが手足口病の特徴です。
発熱について
発熱は約3分の1程度のお子さんに見られます。多くは38℃前後の軽度〜中等度の発熱で、高熱が長く続くことは通常多くありません。発熱がないまま発疹だけが出るケースもあります。
症状の経過(日数の目安)
だるさ・機嫌の悪さ・食欲低下から始まることが多い。微熱が出ることも。
口の中に痛みを伴う発疹・水ぶくれが出始める。よだれが増え、飲食が進まなくなる。この時期が最もつらく見えることが多い。
手のひら・足の裏を中心に赤い発疹や水ぶくれが出てくる。おしり・ひじ・ひざに出ることも。
熱や痛みが少しずつ落ち着いてくる。発疹も徐々に軽快。水ぶくれはかさぶたにならずに治っていくのが一般的。
多くは大きな合併症なく自然に回復する。
🦰 どうやってうつるの?感染経路を知ろう
手足口病は3つの経路で感染します。手洗いが最大の予防策です
手足口病のウイルスは、主に以下の3つの経路で感染します。感染経路を正しく理解することが、家庭内での感染拡大を防ぐ第一歩です。
💧 飛沫感染
感染した人の咳・くしゃみ・会話のしぶきに含まれるウイルスを吸い込むことで感染します。近距離での接触で広がりやすいため、体調が悪いときはマスクの着用が有効です。
🤚 接触感染
ウイルスが付着した手指・おもちゃ・ドアノブ・テーブルなどに触れ、その手で口・鼻・目を触ることで感染します。子どもはおもちゃを口に入れることも多く、保育園などでは特に広がりやすい経路です。
🚽 糞口感染(ふんこうかんせん)
便の中に排出されたウイルスが、手指を介して口に入ることで感染します。おむつ交換後の手洗いが不十分な場合に起こりやすく、乳幼児のいる家庭では特に注意が必要です。
手足口病の原因となるエンテロウイルスは、アルコール手指消毒が効きにくいことがあります。予防の基本は石けんと流水での手洗いです。特にトイレ後・おむつ交換後・食事前は徹底しましょう。
発症後最初の1週間が最もうつしやすい時期です。しかし、症状が消えた後も2〜4週間は便からウイルスが排出され続けることがあります(国立健康危機管理研究機構)。回復後もしばらくは手洗いを徹底することが大切です。
👨👩👦 「子どもの病気」じゃない!大人にも感染します
「手足口病は子どもの病気でしょ?」——そう思っている大人の方は多いかもしれません。確かに、主な感染者は乳幼児ですが、大人も感染します。特に、お子さんの看病をしているお父さん・お母さん・祖父母の方は要注意です。
大人が感染しにくい理由
大人は子どもの頃に手足口病にかかった経験や、知らないうちに感染して免疫を持っていることが多いため、発症しにくいとされています。しかし、免疫を持っていない大人や、別の型のウイルスに感染した場合は発症します。
大人の症状の特徴
大人の場合、子どもと比べて症状が軽いことも多いですが、症状の程度には大きな個人差があります。特に近年流行しているコクサッキーウイルスA6型では、大人でも重症化するケースが報告されています。
- 手のひら・足の裏・口の中の発疹・水ぶくれ
- 発熱(軽度〜中等度)
- のどの痛み・倦怠感が強く出ることも
- 水ぶくれの痛みが強く、脱水で点滴が必要になるケースも
- 発疹が体の広い範囲に広がることがある
手足口病は感染症法上の出勤停止対象には含まれていません。ただし、発熱や体調不良がある場合は無理をせず休養することが重要です。特に食品を扱う仕事や、乳幼児・高齢者と接する仕事の方は、症状がある間は職場に相談しましょう。
📋 親が確認すべき5つのポイント
お子さんが手足口病かもしれないと思ったとき、親御さんが確認すべきポイントをまとめました。日常的に観察しておくことで、受診のタイミングを逃さずに済みます。
- 水分がとれているか:口の痛みで水分を嫌がることがあります。1時間以上まったく水分をとれていない場合は注意が必要です
- おしっこが出ているか:脱水のサインとして、尿量の減少があります。おむつが数時間濡れていない場合は要注意です
- 熱の高さと持続時間:38.5℃以上の発熱が2日以上続く場合や、一度下がった熱が再び上がる場合は受診を検討してください
- 元気の有無:熱があっても機嫌よく遊んでいれば比較的安心です。ぐったりして呼びかけへの反応が悪い場合は要注意です
- 発疹の場所と広がり:手・足・口以外の広い範囲に広がっている場合や、水ぶくれが破れて赤く腫れている場合は受診を検討してください
🏠 自宅でのケア方法
手足口病には特効薬がなく、治療は症状を和らげる「対症療法」が中心です。自宅でできるケアのポイントをご紹介します。
💧 水分補給を最優先に
口の中の痛みで飲食を嫌がることがありますが、脱水を防ぐために水分補給が最優先です。冷たくて刺激の少ないものを少しずつ与えましょう。
- 冷ましたお茶・水・経口補水液
- 冷たいゼリー・プリン・ヨーグルト
- 冷ましたスープ・うどん
- 熱いもの・酸っぱいもの・辛いものは避ける
🌡️ 発熱・痛みへの対応
発熱や口の痛みが強い場合は、医師の指示に従って解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を使用することができます。ただし、アスピリンは子どもには使用しないでください。
🛁 入浴について
発熱がなく元気があれば入浴は可能です。ただし、熱いお湯や長風呂は避け、短時間のシャワーが安心です。家庭内感染を防ぐため、感染しているお子さんは家族の最後に入浴させるか、シャワーのみにしましょう。タオルの共用も避けてください。
🧼 家庭内感染予防
- 石けんと流水での手洗いを徹底(アルコール消毒だけでは不十分な場合があります)
- タオル・コップ・食器・歯ブラシの共用を避ける
- おもちゃ・ドアノブ・テーブルなどをこまめに拭き取り清潔に
- おむつや便の適切な処理(処理後は必ず手洗い)
- 回復後も2〜4週間は便からウイルスが出るため、手洗いを継続
🚨 こんなときは受診を!受診の目安
受診が必要なサインと、自宅で様子見できる場合の目安を確認しましょう
- 水分がほとんどとれず、尿量が著しく少ない(脱水の疑い)
- ぐったりして元気がない、呼びかけへの反応が悪い
- 高熱(38.5℃以上)が2日以上続く、または解熱後に再び発熱した
- 頭痛・嘔吐・けいれんなど、いつもと違う症状がみられる
- 口の痛みが強く、食事・水分摂取が困難な状態が続く
- 水ぶくれが破れて赤く腫れ、二次感染が疑われる
- 元気があり、水分や食事がとれている
- 発熱があっても短期間で下がってきている
- 発疹や口の痛みがあるが、日常生活に大きな支障がない
- 発疹があっても機嫌がよい
判断に迷う場合や不安があるときは、早めに医療機関に相談することをおすすめします。「大丈夫かな?」と思ったら、受診のハードルを下げて気軽に相談してください。
🧼 手足口病の予防のポイント
残念ながら、現在のところ手足口病を予防するワクチンはありません。そのため、日常的な感染対策が唯一の予防法です。
- こまめな手洗い:外出後・食事前・トイレ後・おむつ交換後は必ず石けんと流水で丁寧に洗う
- タオル・食器の共用を避ける:家族間でも感染することがあります
- おもちゃや共用物の清潔を保つ:次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)での消毒が有効です
- 咳エチケット:咳やくしゃみをする際はティッシュで口と鼻を覆い、使用後はすぐに捨てる
- 体調不良のときは無理をしない:発症している人との密な接触を避ける
手足口病は学校保健安全法上の出席停止疾患には指定されていませんが、解熱後24時間以上が経過し、食事・水分が問題なくとれること、全身状態が良好であることが登園・登校再開の目安です。発疹が残っていても元気に過ごせる状態であれば再開可能な場合が多いですが、園や学校の基準に従いましょう。
❓ よくある質問(Q&A)
そんなときは、ぜひ朋クリニックにご相談ください。
朋クリニックでは、内科専門医(血液内科専門医・神経内科専門医を含む5名体制)が、お子さんからご家族の大人まで幅広く診察しています。
「大したことないかも…」と思っていても、早めの受診が安心につながります。
どうぞお気軽にご来院ください。
※眼科・産婦人科・歯科は当院では対応しておりません。あらかじめご了承ください。
📝 まとめ
手足口病は、毎年夏を中心に流行するウイルス感染症です。2026年は例年より早い時期から患者数が増加しており、注意が必要な状況です。
ほとんどの場合は7〜10日程度で自然に回復する軽症の病気ですが、脱水・高熱・けいれんなどの症状が出た場合は早めの受診が必要です。また、「子どもの病気」と思われがちですが、大人にも感染することを忘れずに。
予防の基本は石けんと流水でのこまめな手洗いです。アルコール消毒だけでは不十分な場合があるため、しっかりと手を洗う習慣をつけましょう。
「なんか変だな」と思ったら、一人で抱え込まずに医療機関に相談してください。朋クリニックはいつでもみなさんのそばにいます。
・厚生労働省「手足口病に関するQ&A」
・国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症発生動向調査
・IDWR 2025年第30号「手足口病・ヘルパンギーナ」
・米国疾病予防センター(CDC)Hand, Foot, and Mouth Disease
・日本小児科学会 手足口病解説資料

